弊社で取り組んでいるブランディングがスタートして2年が経過した2020年7月より始まりましたオンライン番組

「私のデザイン経営 強くて愛されるブランドをつくる人々 」

 

その第3回放送の番組内容をまとめた記事を公開いたしました。

お迎えしたゲストとの対談を読み物としても多くの方に楽しんでいただければと思います。

2020年11月26日(木)第3回ゲストは「中川政七商店 中川政七さん」をお招きいたしました。

また、「過去動画を視聴したい」というお声を多くいただくことから、番組アーカイブを配信することにいたしました。

下記申し込みフォームからお申込みいただきますと後日視聴URLをご案内いたします。

▼番組アーカイブ視聴申し込みURL

https://forms.gle/hLjjRm51cimHrJy8A

動画も合わせてご覧いただくことで番組をさらに深くお楽しみいただけると思います。

  

2020年11月26日(木)第3回ゲストは「中川政七商店 中川政七さん」をお招きいたしました

私のデザイン経営 3

強くて愛されるブランドをつくる人々

中川政七商店 中川政七 様

窪之内:今回のゲストである中川会長とは、2回目のゲストだった堀田さんからご紹介をいただいたご縁で、北海道を一緒に旅したことがありまして。素敵な風景を一緒に眺めながらこの企画について話をしたところ、快く引き受けてくださったという経緯があります。

中川:はい、今日はよろしくお願いします。まず自己紹介ですが、中川政七商店という会社をやっていまして、2年前に社長職をおりて今は会長をしています。会社の創業は1716年の江戸中期で、高級麻織物を扱う問屋業としてスタートしました。ずいぶん栄えていたんですけど、明治以降に需要が下がってこれからどう生き残るかというところで、麻の生地と茶巾みたいなものと、雑貨への展開でなんとか生き延びました。

僕が入社する時は、茶巾から始まったお茶道具の事業が主体で黒字、雑貨の事業が赤字という状況でしたね。入社してからはひたすら業務改善と、売り上げを伸ばすためにはどうしたらいいんだろうと考えて、卸しをやっていてもなんともならんので直営に舵を切ることにしたんです。最初は本当に苦労したんですが、4年前に創業300年を迎えまして、今では企業再生のコンサルティングをやったり、『中川政七商店』・『遊 中川』・『日本市』という三つの業態を展開しています。

青山:なぜコンサルティング業を始められたんですか?

中川:始めようと思ってやったわけではなくて、中川政七商店は古い会社なんですけどビジョンとか社是というものが何もなかったんです。それで作らなきゃと思って2007年にできたのが「日本の工芸を元気にする!」っていうビジョンだったんですね。言ったからにはやらなきゃということで、元気にするということは経営コンサルに入るしかないなと。だからこのビジョンがなければ経営再生コンサルをやることも多分なかったですね。

青山:ビジョンをちゃんと持っていない会社は多いですか?

中川:そうですね。実際僕もビジョンなんて気にせず黒字化のために一生懸命やってて、でも黒字化ができてから「なんのために働くのか」「会社はなんのために存在するのか」ってことが気になってビジョンについて考え出したんですけど。結局、2、3年は悶々としましたし、父親には「そんなもんあっても儲からへんぞ」と一蹴されておしまいだったので、逆にあっても機能していない会社も世の中にはいっぱいあると思います。一方で、良いビジョンを掲げることができてそれが機能すると、実は会社にものすごくプラスになるっていうのは20年やってきて本当に思うんです。

青山:コンサルしてくださいって依頼があったんですか?

中川:当時は表参道に店舗ができてちょっと売り上げも伸びて、業界的には少し注目された時だったんですけど、とはいえ地方のいち企業がちょっと上手くいってるだけなんで、誰もコンサルのお願いなんてしないですよね。でもやらなきゃビジョンが嘘になると思ったんで、まずやったことが本を出すことだったんです。その本の中でコンサルやりますと宣言したら、それを読んでくれた長崎県の有限会社マルヒロという会社の社長さんが電話をくれて、始まりました。

青山:本の出版からのスタートだったんですね。

中川:このマルヒロさん、当時は年商が8,000万まで下がってて崖っぷちの状態から始まって、結果的にはブランドは大成功して今では売り上げが3億円で、うちより営業利益率が高いんですよ(笑)。うらやましい限りです。

青山:中川会長から見て、どう変わればいいのか方程式のようなものがあるんでしょうか?

中川:僕がいつも言ってるのは経営をしてないんですよ。例えば予算表すらないですね。そこにちゃんと経営を持ち込めば絶対良くなるんです。それは大学受験をしなきゃいけないのに九九も知らない状況なんで、だから九九を教えたら絶対に上手くなるんですよ。僕は経営者の家庭教師って言ってるんですけど、経営者が経営の勉強をほぼしてこなかったっていう状況が多いんで、その勉強をすれば絶対良くなると思いますね。

青山:鎌田さんもはじめに会社の決算書を見るっておっしゃってましたよね。

中川:決算書を見るんですか?

鎌田:そうですね…。特に経営規模の小さい会社の場合はなるべく見るようにしています。それはできることとできないことを見極めたいからなんですよ。例えば環境大善さんだと15段の新聞広告を6回シリーズで出しているんですけど、その広告が及ぼす効果が利益に見合っているかとか、そういったことを判断したいというか。そういうところから経営の方に目が向いていった感じですかね。

窪之内:うちも最初に決算書を見ていただいて、そこから3年間で何をやるかってことをある程度最初に決めましたもんね。

青山:基礎が見えていないとデザインを変えても難しいってことですよね?

中川:コンディションの見極めですね。佐藤可士和さんもよくおっしゃっていますが、企業の主治医なんだと。主治医である以上はカルテを読まなきゃいけなくて、カルテは何かというと決算書なんです。

青山:では、中川会長が理想とするアートディレクターまたはデザイナーってどういう方でしょう。

中川:難しいことを聞きますね(笑)。ひとつは、今の時代ちゃんとした経営あるいはブランディングをしていこうと思うと、経営からブランディングコミュニケーションまで一気通貫でやらなきゃいけないんですよ。それを一人の人間でやり切れればアートディレクターやクリエイティブディレクターを呼ばなくてもいいんですけど、やっぱり精度を求めると多少の分業は発生します。経営者は当然、経営寄りのことをしっかりできて、かつクリエイティブに対する理解、リテラシーをしっかり持つこと。逆にクリエイティブサイドも、経営に対するリテラシーを持つこと。お互いの領域が重なり合ってはじめて良い取り組みになるんで、どちらか片方の問題ではなくて、双方がそれぞれに領域を広げていくような努力をしなきゃいけないと思います。

青山:アートディレクターの方には、経営のことをしっかり勉強していただかないと主治医というところまではいかないですか?

中川:最近は減りましたけど、一昔前のデザインって自己表現みたいな、売り上げは興味ないみたいな時代もあったと思うんです。だいぶ変わってきてはいるものの理解はまだまだ足りないし、経営者サイドもクリエイティブの理解が足りてないとは思いますね。相変わらずブランディングって言うとデザインを良くすることだと皆さん思っておられるんで、そこは両方から歩み寄りが大切だと思います。

窪之内:事業承継についてご質問したいです。中川会長はお父さんから事業を引き継いで、さらに千石社長へ引き継いだじゃないですか。何に気をつけてどうバトンを渡したのかお聞きしたいです。

中川:父からのバトンの受け方で言うと、僕が入社したのが2002年で2008年に社長になったんですけど、入社した瞬間から雑貨部門の経営者としてやってたんです。父親がやってた茶道具部門とは別に。なので父親から譲り受けたって感じはないんです。すごく恵まれた環境でやれたなと思いますね。もちろん父親に随時報告はしてたし、ビジョンを定めるとか小売に舵を切るとかそのたびに意見は言われるんですけど、けして拘束はされないんで、小売を始める時も「やめとけ、儲からんぞ」と言われましたけど、ブランドとして認知されるにはこれしかないんだと言えば「好きにせぇや」ということだったんで。

青山:お父様も任せても大丈夫という自信があったのでは?

中川:なんなんでしょうね。一方で今の社長である千石は僕より二つ下で入社して10年弱だと思うんですけど、彼女に引き継いだのはいろんな意味で前例のないことでしたね。まず中川家じゃない人間というのが初めてだし。でも単純に会社のコンディションを考えた時に、会社をより良くするにはこれがいいなという経営判断でした。ただ僕としては段階を踏んでたつもりなんですけど、彼女はまったく気づいてなかったみたいで、笑いながら「無理無理」って。冗談じゃなくてホンマやからって言って、そこから二、三ヶ月かけて話しましたね。気をつけたことは、自分が父親からまったく口を出されずにやらせてもらえたことが良かったので、僕も口を出さないでおこうと。一応会長職にはなってますけど本業にはほとんどタッチせず、僕はコンサルティングと奈良の街に向けてひたすら別働隊としてやってる感じです。

鎌田:ずばり「デザイン経営」に対する中川会長の考えをお聞きしたいなと。

中川:僕は全体としてコンディションを読み間違えてると思うんです。「デザイン経営」で提唱されている大切なことっていうのは、いわば微分積分みたいな難しい話だと。先ほども言ったように、いやいやみんな九九ができてないんだっていう現状があるなかで、特に中小企業の経営者に向けて微分積分をやれって言うのは、僕はミスリードだと思います。まずわかりやすくするためのデザインっていうのはあくまで手段だと思うし、どちらが上位概念かって言ったら経営が上で、その下にデザインだと。だからそれも含めて、危うい言葉だなと思っています。

鎌田:そうですね。この放送を視聴していただきたい方にも、デザインがすべてを解決するみたいに捉えられてしまう側面があります。デザインは魔法ではなく経営に生かすひとつの手段なので、そういう捉えられ方が上手く浸透しない原因かなと思っているところがあります。

中川:僕からも鎌田さんに質問。窪之内さんとは今回が初めての仕事ですよね? 窪之内さんも、いろんな方にお会いして結果、鎌田さんを選ばれたわけですよね。となると、鎌田さんは結果を出さなきゃいけないっていうプレッシャーがあると思うんですけど、そのなかで「そういうことじゃないですよ、長い目でこうやっていかなきゃいけないんですよ」って言うのってなかなかできないことだと思うんです。それは他の仕事でもそういうスタンスなんですか?

鎌田:なんていうか…。コンピューターが発達して誰でもデザインができる時代に、わざわざお金を払って依頼するってことは、正しいことをしたい方だと思うんですよ。なので、媚を売るようなことをしてしまうと真実がどこにあるかわからなくなってしまうので、なるべく自分がベストだと思うことを申し上げるようにしています。

窪之内:鎌田さんとお会いした時にいただいた資料と説明が、うちの今の状態に合わせてあって、「僕これがやりたいんだ」って思ったんですよ。『きえーる』を売りたいんじゃなくて、この液が何者か知りたい欲求っていうんですかね。それを形にしてくれる人って誰なんだろうって考えた時、この液を定義してくれて長く一緒にやってくれる人じゃないとパートナーとしては難しいぞと。

青山:善玉活性水って言葉は今までなかったんですよね。でも鎌田さんが入って名前が付けられたことで、環境大善さんのことを端的にお話しできるようになったと思うんです。

中川:そうですね。言葉とか定義ってすごく大切ですし、ブランディングって伝わることなんで、わかりやすくなきゃいけない。だから善玉活性水なんて科学的にはないんだろうけど、伝わるから、それが正しいコミュニケーションなんですよね。手前味噌ですけど、「日本の工芸を元気にする!」っていうことを掲げた瞬間に中川政七商店は変わったと思うんですよ。それ以前とやってることは一緒なんですけど、物を作って売ってる会社だったところから、日本の工芸を元気にする会社になったんです。そうなった瞬間に会社のセグメントというか土俵が変わる。これも言葉ですよね。

鎌田:ビジョンの重要性はすごく感じます。端的に言うと工芸って儲からないイメージがあるので、日本の伝統工芸を元気にするっていう言葉を聞いただけでワクワクするというか。

中川:細かいとこなんですけど、僕は”伝統“って言ってないんですよ。必ず”工芸“と言うようにしていて、なぜかというと伝統って悪い意味も孕んでて、要はもう終わってしまったものというか。自動車産業って100年以上経ってますけど、誰も伝統自動車産業って言わないじゃないですか。それは常にアップデートされて今の時代も産業として成立してるから”自動車産業“と呼ばれるわけですよね。だから伝統が外れるようになるところまで行けば工芸が元気になったなと思うんで、そういう世界を目指しています。

窪之内:僕らがやってきたことはまだ道半ばなんですけど、今日は中川さんに聞きたいことが聞けて、やってきてよかったなと思います。規模感はまだまだ小さいですが、実はこの間カンボジアから受注があって、研究やデザインは国を超えるんだなと。そのきっかけは中川会長なので、この企画に出ていただけて本当に感謝しています。

ゲスト

株式会社中川政七商店

代表取締役会長

中川政七

1974年生まれ。2002年に家業である中川政七商店に入社し、2008年に十三代社長に就任、2018年より会長を務める。業界初のSPA業態を構築し、工芸をベースにした雑貨の自社ブランドを確立するほか、業界特化型の経営コンサルティング事業を開始。近年は産業革命と産業観光をキーワードに、産地単位での地域振興にも取り組む。

解説

KD

クリエイティブコンサルタント

アートディレクター

鎌田順也

1976年生まれ。デザインコンサルティングを行うKD主宰。理念作成からロゴマーク及びCI・VIデザイン、ネーミング、商品開発など多岐にわたって活動している。審査員として2025年大阪・関西万博 ロゴマーク、ロンドン D&AD パッケージ部門に招請。ニューヨークONE SHOW 金賞、JAGDA新人賞など、受賞歴多数。

主催

環境大善株式会社

代表取締役社長

窪之内誠

1976年生まれ。北海道・北見市にある環境大善株式会社の二代目。父の後継として、2019年の2月1日に事業承継を行った。会社の主な事業内容は、牛の尿を微生物で発酵・培養した『善玉活性水』から作る消臭液「きえーる」や、土壌改良用の「液体たい肥 土いきかえる」などの開発から製造、販売までを手がける。

進行

フリーアナウンサー

北海道観光大使

青山千景

18歳から現在まで、ラジオパーソナリティやテレビのグルメ・観光番組のレポーターとして幅広く活動している。2007年度ミスさっぽろ受賞、2017年には北海道認定 北海道観光大使、2020年に札幌観光大使に就任し、MC業のみならず、大学や企業向けマナー研修講師も年間100本ほど務める。

発行 環境大善

アートディレクション・デザイン 鎌田順也

編集・コピーライティング 佐藤のり子