※この記事は2021年3月25日に行われたオンライントークイベント「私のデザイン経営 強くて愛されるブランドをつくる人々 No.5」にて放送された内容をもとに編集しています。

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窪之内:5回目のゲストは青山ブックセンター本店の店長、山下さんをお呼びしましたが、どうやって知り合ったかというと逆ナンなんですよ(笑)。小倉ヒラクさんがヒカリエで発酵イベントをした時に弊社も関わらせていただいて商品を販売してたんですけど、そこで山下さんがうちの商品を持っていて「私これ使ってるんですけど、ABC(青山ブックセンター)で書籍フェアやりませんか」ってお声をかけてくださって。それをきっかけにいろんな繋がりができて、今に至るという。

山下:青山ブックセンターは六本木店から始まって丸ビルとかもあったんですけど今は1店舗のみで、本店も広さ自体は縮小して。逆に棚の高さを上げて在庫量は増やす形でリニューアルしたんですよね。もともとイベントをたくさんしていましたがさらに増やして、気がつけば最大で月に27本っていう。会場は空いていたし、売り上げが落ちていたタイミングでもあったので、まず足を運んでもらわないとどうしようもないというか。足を運んでもらえれば買ってもらえる自信はあったので、そのためにイベントを増やしていきました。
出版を始めようと思ったのとロゴの変更、コミュニティーの開始などが全部同じタイミングで、2020年ですね。変わらないために変わるというか。旧ロゴも好きだって方が多いのはわかってたんですけど、とあるコンビニとイメージが近くてそちらの印象が強いという声もあり。あとレジ袋が有料になることで変わることもあって、それも見据えて変えたいなと。新ロゴは空と緑に大地を足して、この青山の地にあるという意味も込められて、この色合いになりました。

青山:本棚のセレクトは山下店長がされているって記事を拝読したのですが“買いたくなってしまう本”というのは、どうやってピックアップしてるんでしょう?

山下:まず出版社さんからの案内を見てっていうのが一番にあります。あとはうちに来てくださっているお客様が何を買っているかを見て、その次は何を読むのかとか、次はこれに興味を持つだろうとかをずっと考えています。いまいちマニュアル化できていないんで、スタッフ間でも伝えるのは難しいんですけど。基本的に各ジャンルに担当者がいるので、自由にやってる感じです。もちろん「これもっと置いた方がいいんじゃない」とか口出しはしますけど、うちくらいの中規模店舗はそういう風にやっていかないと魅力がないかなって。各棚の担当者がそれぞれ店主というか、それが連なって商店街みたいになるっていうのは意識しています。

青山:レーベルもお持ちということですが、どうやってくどいてらっしゃるんですか?

山下:『Aoyama Book Cultivation』って名前で作らせてもらって、小倉ヒラクさんの場合は持ち込み企画というか、もともと第一弾ではなかったんです。最初に窪之内さんのお話に出た展示を拝見してたんで、そのヒラクさんが見ているままの質感の写真で出したいと「むしろお願いします」と言っていただいた形です。ちょうどヒラクさんが全国の書店を回られた後にお会いして、書店があまり儲かっていないのは良くない、健全に回ってないのは良くないことなんじゃないかって。
話をしているうちに、第一弾を出すならオールユアーズの木村さんにお願いしたいって思って、もっと名の知れた方もいるとは思うんですが、どうせうちがやるなら、まだ本を出されてない人がいいなって。どの方も、趣旨を説明したらだいたい「やりましょう」って言ってくださるんで、それはありがたいなと。著者さんにとっては全国規模で出した方がもちろん良いこともある。でも作り手にしろ印刷会社にしろ、どこも損や無理をしない。印税とかその時によって条件が違いますが多めに出したり、いろいろできている感じですね。一般的な書店の利益は25%いかないくらいなんですが、それより高い設計になっていて、そこにまず賛同していただき、その分、自由にできるというか。バーコードがないとか、形も自由だし、レイアウトも普通の流通だったらできない感じとか。

青山:本となると、どうしても返品リスクって考えないですか?

山下:いわゆる委託制度になっているので、それは逆に良さでもあるかなって思っていて。チャレンジというか、あんまり実績のない著者さんでも売る側が覚悟を持ってやればできるかなと思ってて。

窪之内:この間は塩谷さんの本をすごい冊数仕入れてたよね。心意気がすごい。

山下:返品ありきではもともと注文してなくて、まず売るっていうか届けることが第一にあって。届かない時はあるんで、そこは申し訳ないなというか。

青山:でもそれはABCさんのブランディングあってこそのというか、そういうところに根強いファンの方がたくさんいるのかなと。鎌田さんが「青山ブックセンターはセンスを売ってるんだよ」って教えてくださったんですけど…。

鎌田:ページを繰ると元気になるというか、そういうエナジーを青山ブックセンターさんは提供してくれると思ってて、そういう意味でファンなんです。欲しい本があったら「今度、東京に行くからABCで買おう」と思うんですよ。そういう魅力の秘密をお聞きしたいなと。

山下:他の店舗と違うってよくおっしゃっていただけるんですけど、あまり都内の他の書店に行かないので、どこが違うのかは正直、わかんないんですけど(苦笑)。ただ、一冊本が欲しいだけだったらうちじゃなくてもいいんです。大型店とか、通販とかで頼めばいい話なので。じゃあ、そこからもう一冊買ってもらうには?それがどんどん繋がるには?っていうのは、ずっと意識してます。
 
青山:次に手に取りたいなって思ってもらえそうな本を隣に置くとか、そういうコーナーを作るとか?

山下:欲しい本を手に取った時に両脇に何があるかとか、そこに行くまでの視線に何が入るかとかで考えています。本屋って、無意識を意識化できる場所だなと思っていて。タイトルを見た時に「自分ってこういうのに興味があったんだ」とか、「こういうのが欲しかったんだ」って思える場所が一番、強いと思ってるんで。

青山:どうやってそのセンスを磨いているのか、気になります。

山下:いっぱい失敗もしました。勧められたものも買ったし、売れてるからっていうのでも買ったし。“自分でおもしろそう”って思ったのを買っていく、自分で選んでいくしかないんですよね。皆さん、損をしたくないとか失敗したくないからって、目の前に本があるのに、スマホでレビューを見たりするんです。だけどそれで買って失敗しなくても、響いてこないよなっていうのは、ずっと感じています。失敗というか「これ、あんま好きじゃないんだな」と思えば、次はもう少し精度が上がるというか。良いものをとにかくたくさん見ろっていうのがあると思う。そこからどうやって自分の視点を持つかが一番大事かなって思ってます。

青山:さきほどロゴの話がありましたけど、青山ブックセンターはブックオフコーポレーションの傘下ということで、ロゴの変更は大変だったんじゃないかなと。その辺のプロセスなどはいかがでしたか?

山下:傘下というか、新刊複合事業部の中のひとつという位置づけにあります。企画書を書くってことが苦手なので、こういう風にやっていきたいっていうのを説明して、袋が有料化するタイミングだったので、それなら”持ちたい“と思ってもらえるものがいいなとか。ブックカバーも創業当初から変わってなくて、あとお恥ずかしい話、どういう思いが込められて作ったかっていうのを、誰も知らない状態だったんですよ。で、さすがにレトロ感が強すぎたというか、そこをもうちょっと変えたいなというのはありました。今回はタカヤ・オオタさんにデザインしていただいたんですけど、最初は公式のツイッターから一度ご相談させていただいたら、なりすましのアカウントかと思ったと言われてしまいました(笑)。デザインを見せていただいた時にすぐいいなと思いましたし、発表した時もほとんどマイナスな感想もなく、想像以上に反応が良かったですね。何かを変えた時って、どうしても否定の方が増えてしまうと思うんですけど、タカヤさんにお任せして良かったなと思います。

鎌田:あのロゴは、昔からあれだったみたいな、そういう良さがあるなって。あんなに見てたのに昔のロゴを思い出せなくなりました。
山下:自分もタカヤさんと対話しましたし、うちのスタッフとも話したりしてくれて、その中で“旧ロゴの青と緑の、色の強さ”というのをベースに残そうっていうのはおっしゃってましたね。これで昔と色をガラッと変えてたらぜんぜん違ったと思うし。「本屋の良さを変えないために変わっていきたい」っていうのはずっと伝えてたので、それを反映していただいたのかなと思ってます。

窪之内:ABCさんのロゴは紙袋を買いたくなるし、かけなくていいんだけどカバーもかけちゃいたくなる(笑)。

青山:イベントについてもお聞きしたいのですが、“ひと月に何本”というように決まってたんですね。何から何までご自身で仕切るんですか?

山下:一時期は、翌月も含めると30〜40本動いてるみたいな、あの時はまだ任せられるスタッフがいなかったんで、一人で狂ったようにやっていましたね。今は分担してできるようになったので環境はいいんですけど、あの頃があったからこそ今があると思うし、ある程度はどっかで頑張り時があるよなって、今これを言うとちょっとモラハラ的になるかもしれませんし、それがベストとは思わないですけど、みんな、そういう形で頑張るタイミングがあってもいいのかなって。もちろん、それでダメだったからといってダメというわけではなく、チャレンジとかをするタイミングが、もっとあってもいいのかなって。

鎌田:デザイナーの世界でもそうですけど、バット振りたいのに「夜は振るな」って言わなきゃいけない世の中もちょっとどうなのかなって、思いますよね。なんかうまいことできないかなって。

窪之内:森山大道さんって写真家が好きで書籍を読んだりするんだけど、「量から質が生まれる」って言うんですよ。スナップショットをめちゃくちゃ撮ることで、そこから撮りたいものが撮れたり、偶発的な予定調和じゃないものが撮れるっていうことを書いていて、これはすべての仕事に当てはまるし、絶対的に量をやらないと質にはたどり着かないんだろうなって思うわけですよ。

山下:無駄なことはショートカットすればいいと思うんですけど、どうしてもそこはぶち当たると思います。

青山:では、青山ブックセンターだからこそできるイベントや目標はなんですか?

山下:オンラインイベントで登壇者のサイン本とかもいいんですけど、結局その一冊だけとかになってしまうと、実店舗のある本屋がやる必要あるのかなって感じてしまって。本を届けたいし、本屋に来ることが一番大きいのかなっていうのは再確認しましたね。以前から感じてはいたんですけど、(コロナの影響で)今、定員半分くらいでやっているので、満員にして、イベントの熱量を共有してもらい、その人たちが帰りに棚の本を見ていくとか、始まる前に見るっていうのをもっとやっていきたいなと感じます。

窪之内:レジの後ろにイベントの告知がめちゃくちゃ貼ってあるんだよね。東京の人たちは見たいと思ったらわずかな参加料で見られるんですよ。著者の話を聞いて、書籍を買って、また深まるじゃないですか。それができるのがうらやましい。

山下:リアルの空気感ってやっぱすごく大きくて、身体的に入ってくるっていうのは、ぜんぜん違うなって。同じ内容のイベントでも、その時の風景というかお客さんの反応で違うし、拍手が鳴ってる時とかうるっと最近、してますね。

青山:本も電子書籍とかありますけど、実際に手に取って読むとその重みとか匂いだったり場所なんかで、おもしろさとかワクワク感って違いますよね。

山下:このコロナで、より良さを突きつけられたというか、意識してなかったようなことがもう一回、掲示されたというか。コロナが始まって電話対応をやめたんですけど、それまではずっと電話は鳴るので店内作業を中断しながら問い合わせや取り置きに対応していて。来店してくださるお客さんに対して200%の価値を提供できていないなっていうのがあったんです。対応できたらいいんですけど予算の関係でできなかったり、在庫検索できなかったり、そういう不便なところをあえて受け入れるっていうか、受け入れてじゃあどういう風にできるかをやっているところです。前はとにかく集客第一というか来てもらうのが大事だったんですけど、今はお客さんとのマッチングというか…。もちろん門戸はずっと開いてますし、うちにきて楽しんでもらえるお客さんともっとお互い出会えたら、来てもらって損したと思わないようにできたらなと。

青山:最後に一言、お願いします。

山下:コロナとか関係なく、どうしても本屋っていう業態が減っていってしまうと思うんですけど、うちを含めて残っていけたらなと思っていますし、無意識を意識化できる場所としてはたぶん、一番いい場所だと思っているので。儲けたいというと語弊がありますが、店舗が存続できたりスタッフの時給を上げるとか社員を増やすとか、そういう風にお金を使えるようにしていきたいなと思っています。立地は正直、大変不便なんですけど、雨が降ると本当に誰もいないですし(笑)。本屋を貸し切りたい人はぜひ、雨の日に来てください(笑)。

窪之内:今日は山下さんにゲストに来ていただいて、意外な一面というか、熱い一面を聞かせていただいてうれしかったです。次回、リアルで会う時には、もっといろんな話ができますね。

ゲスト
青山ブックセンター本店 https://aoyamabc.jp/
店長
山下 優
1986年生まれ。2010年5月、青山ブックセンターにアルバイトとして入社。社員になると同時に本店の店長を任される。アルバイト時代から棚担当としてレイアウトなどに関わり、店舗のリニューアルを機にイベント担当となるなど書店員としてのスキルを身につけ、書店の現状や出版業界などの今後を見据えた、独自の店舗営業を行う。

解説
KD
クリエイティブコンサルタント
アートディレクター
鎌田順也
1976年生まれ。デザインコンサルティングを行うKD主宰。理念作成からロゴマーク及びCI・VIデザイン、ネーミング、商品開発など多岐にわたって活動している。審査員として2025年大阪・関西万博 ロゴマーク、ロンドン D&AD パッケージ部門に招請。ニューヨークONE SHOW 金賞、JAGDA新人賞など、受賞歴多数。

主催
環境大善株式会社
代表取締役社長
窪之内 誠
1976年生まれ。北海道・北見市にある環境大善株式会社の二代目。父の後継として、2019年の2月1日に事業承継を行った。会社の主な事業内容は、牛の尿を微生物で発酵・培養した『善玉活性水』から作る消臭液「きえーる」や、土壌改良用の「液体たい肥 土いきかえる」などの開発から製造、販売までを手がける。

進行
フリーアナウンサー
北海道観光大使
青山千景
18歳から現在まで、ラジオパーソナリティやテレビのグルメ・観光番組のレポーターとして幅広く活動している。2007年度ミスさっぽろ受賞、2017年には北海道認定 北海道観光大使、2020年に札幌観光大使に就任し、MC業のみならず、大学や企業向けマナー研修講師も年間100本ほど務める。


発行 環境大善
アートディレクション・デザイン 鎌田順也
編集・コピーライティング 佐藤のり子